夜勤の魅力1

夜勤の魅力1

夜勤の巡視の際の忘れられない思い出ですが、私が看護師になって3年目だったのですが初めての夜勤で重症者のいる部屋を任された時のことです。

脳卒中で救急搬送されて、充当な状態だったのですが、何とか一命をとりとめ、その後少しづつ回復してきたときのことでした。

夜中に私を呼び止めこんな話を始めました。

自分は昔帝国陸軍の士官だったが任務のためにいろいろと秘密工作をやっていた。

戦死した従兄弟の戸籍と自分をすり替えてそのまま今日まで生きてきた。

終戦は満州で迎えてそこで憲兵の仕事をしていて現地では今思い出すのもおぞましいことをやっていた。

シベリアで3年間抑留されてその後日本に帰ってきたけれど、戦争犯罪人として死刑になる覚悟だった。

でもこうして73歳まで生きながらえて、自分が自分でないようななにか実感の沸かない人生だった。

役所で本当の名前に戻そうと話をしてみたが、無理だと言われたので、従兄弟の名前で生きてきたが、本当の自分の名前に戻して一生を終えたいと思っていたと。

こんな深刻な話を聞けるのは看護師だからこそでしょう。

その後その患者さんは退院しましたが、その後も一人暮らしの寂しさからかたまに病院に来ては話相手を探しているようです。

「人間って死ぬのは怖いものだと思っているけど、意外に死ねないものだね」と言っていたことが印象出来でした。

看護師の仕事をよく知らない人からは「夜中の病院なんて気味が悪くて私には絶対に無理な仕事だ」というようなことを言われたこともありますが、日勤の慌ただしさに比べれば患者さんの急変がない限り、ゆったりと仕事ができますし、先ほどのお話のように、眠れない患者さんや話し相手を求めている患者さんとの会話ができたりと私にとってはとても好きな時間です。

そうはいっても看護師の多くは女性ですから、やはり怖い話をした後なんかだと一人で巡視に行くのはなかなか気が進みません。

どこの病院にも人の生と死の最前線で仕事をしている以上、怖い話というのはいくらでもあるのです。

2014年1月31日|